第三回「通信サービス等のトラブル」~消費生活アドバイザーから見た日本社会におけるギャップ

ケータイ等の電気通信サービスでトラブルに遭わないために

事例①「スマートフォンの機種変更」

家電量販店の販売コーナーで、スマートフォンの機種変更を依頼した。販売員は「今、特別キャンペーン中なので、光回線契約をセット購入すると、タブレット端末をタダでサービスできるし10000ポイント付加する」と言った。良い話だと思い、契約したいと告げたところ、販売員が契約書を持参した。その時に、数種類の有料オプションを勧められた。店員は「この有料オプション契約は1か月間無料で使え、その1か月以内に解約できるので実質無料になる。ただしこのオプションを付加せずに契約する場合は、頭金名目で、端末代金とは別に6,000円かかる」と言った。躊躇もあったが、店員の勧める通りのプランで契約書にサインした。

1週間後、これらのオプション契約が必要ないので解約することにした。販売業者のWEBサイトを確認したところ、解約は電話で受け付けると書いてあった。しかし販売業者に何度電話しても繋がらない。時間を空けて繰り返し電話したが話し中でつながらない。後日やっと電話が繋がったので解約申し出したら既に1か月過ぎているので解約料を請求すると言われた。 2か月後、1か月分の利用料金を見たところ、ケータイ利用料金の他に光回線代やタブレット端末の基本利用料金、有料オプション利用料が計上されていて、今より1万円高い請求だった。再度解約を申し出たら、高額な解約料を請求された。余計な契約をさせられたので不満だ。(給与生活者 35歳)

注 意 点
  • 近年、携帯電話の「通信料金と端末代金の完全分離」や割引の上限額(2万円)が改正電気通信事業法の新ルールとして施行されました。端末代金を通信料から割り引く(いわゆる「実質0円」)などの料金の分かりにくさを解消するためですが、事業者や契約機種・内容・タイミングなどにより、今までより料金が高くなることもあります。
  • 電気通信サービスの利用者がそのサービスの契約内容等を十分に理解せず、後でトラブルになることを防ぐために、電気通信事業者や販売店には、契約する前に、解約条件など基本的な契約内容等を利用者に説明することが義務づけられています。説明を受けるだけでなく自ら契約規約等を熟読し確認しましょう。
  • 携帯電話サービス等の電気通信契約では、一定期間の継続利用が条件になっている場合があります。この場合、継続利用期間中に解約する際には解約金が発生したり、継続利用期間が経過した翌月に解約の手続をしないと契約は自動継続になることがあります。解約の条件を契約規約にてしっかり確認しましょう。
事例②「光ファイバー」

先日利用中のメッセージアプリ業者名でスマホに着信履歴があった。着信履歴を見て業者に電話したところ、販売員は「ご利用ありがとうございます。現在のネット接続回線を光ファイバー回線に変更し、スマートフォンとインターネットと携帯電話を一括契約にすれば、現在の利用料と比べて劇的に安くなる。接続速度も速くなる」と説明した。そこで「現在はCATVとケータイとのセット割引で契約している。それでも現在より安くなるのか」と伝えた。業者は「もちろん安くなる。今契約しないとサービスは受けられない。私のいうことを信用してください」と何度も強調した。この説明を信じて契約を了承したら、業者が自宅に来て光回線を設置した。

1か月後、契約中のCATV業者から別件で電話があったので、この契約について相談したところ、「CATVから光ファイバーに変更したからと言って、利用料が安くなるはずはない」といった。念のため、新たな利用料請求書を、過去の利用料と比較したところ、説明と違い利用料が高くなっていた。更にオプション契約が無断で10個付加されていた。業者に電話し、契約取消して以前の状態に戻すよう要求した。しかし業者は、契約は正当な手続きで成立しており、契約取消はしない。解約するなら解約料を請求するといった。そこで“うその説明により希望しない契約をさせられたので、無条件で契約を取消して貰いたい”と記載した内容証明扱信書を業者責任者宛に送付した。業者の回答書には、販売員の勧誘トークを自社の音声データで確認し、その結果適正な契約であると判断した。証拠の音声データは保管してある、と回答した。業者に電話し、保管しているなら、音声データの内容を自分で確認したいと伝えた。しかし業者は、音声データ等は社外に開示していないと回答し、説明の不正を認めない。(解約請求額)115、000円(給与生活者 46歳)

注 意 点
  • 事業者は、消費者宅に勧誘電話する際、正規の事業者名を名乗らなくてはなりません。正しい事業者名かどうか確認し、うその事業者名を騙ったと分かった段階で断るという選択肢もあります。
  • 事業者は、勧誘に先立って、販売目的を告げなくてはなりません。「ご利用ありがとうございます」などと告げ、利用環境が現在と変わらないことを強調し、新規の契約であることを認識させにくくする等の勧誘目的を隠す行為には注意が必要です。
  • 契約を急がされたとしても、十分時間をかけて事業者のWEBサイト等で契約内容を詳細に確認し、また電気通信サービスに詳しく信頼できる人に相談するなどしてから判断して欲しいです。
  • 事業者は勧誘に際して、現在の利用料と比べ劇的に安くなる、接続速度が速くなる、有料オプションを無断で契約させる等、不実の説明により希望しない契約をさせられた場合は、法に基づき、事業者に対して解約申し出が可能と考えられます。ただし申し出を事業者に拒否された場合には法的手続きが必要になります。
【参 考】電気通信契約における「消費者保護ルール」
  • 初期契約解除制度とは、電気通信サービスの契約を結んで、契約書を受け取ってから8日以内であれば、一方的に契約を解約できるということを定めた制度です。この際、例えば2年以内の解約に違約金が設定されていたとしても、この契約自体がなかったことになるので、違約金の支払いは不要となるなど、契約初期での解約のハードルは非常に低くなっています。ただし、携帯電話端末の購入はキャンセルできない場合が多いなどの注意点があります。
  • また、大手携帯会社3社(NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク)など一部の携帯会社では、初期契約解除制度の代わりに、確認措置という制度を適用しています。「電波状況が不十分」「説明が不十分」などの場合に限り、8日以内であれば端末もキャンセルできるようにしています。これらの違いを理解すれば、万が一、契約後に希望しない契約だったと気づいても、スムーズに解約できます!
  • これらの制度の対象や、確認措置の対象となる事業者のリストについては、電気通信消費者情報コーナーの「消費者保護ルール」を参照してみてください。(総務省・携帯電話ポータルサイト)
執筆者プロフィール 金崎賢秀(HN)

埼玉県在住。2003年消費生活アドバイザー資格取得。2005年民間保険会社を定年退職し、同年、地元自治体の消費生活センターで消費生活相談員に任用される。以来18年5か月勤務し、2024年3月末に退職する。現在は社会貢献活動として地元の複数の相談業務に参加。
趣味:各地の自然遺産の探訪。読書(推理小説を乱読)。1945年生れ。