第五回「婚活のトラブル」~消費生活アドバイザーから見た日本社会におけるギャップ~

婚活でトラブルに遭わないために

◆「マッチングアプリ」は恋愛や結婚等を目的として会員同士をマッチングするサービス。会員になるため自身のプロフィール(生年月日、性別、居住地、職業等)や写真、自己紹介文等を登録した上で、検索等により 交際相手や結婚相手を自身で探すことができるものが多い。

◆「結婚相手紹介サービス(結婚相談所)」は、結婚を希望する者へ異性を紹介する、ふさわしい相手を個別に紹介する、お見合いのセッティングを行う、 交際に関するアドバイス等のサポートをするものなど

<事例①:マッチングアプリ

 婚活のため某マッチングアプリの会員登録をして、ある男性とマッチングしました。電話で色々話をしたあと、予約した店で会いました。そして彼の優しい雰囲気に惹かれ数時間会話しました。素敵な人と感じたのでキスを受け入れたあと、次回の約束をしました。帰り際、二人の写真を撮りたいといったところ、彼はキレ気味になり「写真はダメだ」と言いつつ更に関係を迫ってきました。「なぜ写真がダメなの」と聞きましたが、彼はそれには答えてくれません。もしかして不倫?なのかと思い、不安になり、一方的に帰りたいと伝え、帰ってきました。

その後、謝るつもりで彼に電話したら、「自分の自宅に来ないか」といってきました。自宅に行くのが怖いので躊躇していたところ、彼から、私のアプリのプロフィール写真全てのスクショが送られ、会わなければこれら全てをアップすると言ってきました。怖くなったので、「今後は連絡してこない」でといい、「これ以上のことをするなら警察に相談する」と伝えました。

しかしその後も、相手からの連絡や脅しが止まりません。SNSを全てブロックしましたが、ブロックした後も何かしてくるのかと不安です。 私がバカだったのだと思いますが、こんなに恐ろしい人だとは思いませんでした。マッチングアプリ業者にこの経緯を伝えましたが対処できないとのこと。マッチングアプリの選び方、使い方を含めてどうすべきだったのか知りたいです。 (30代 女性)

★恋愛、もしくは結婚意向があり恋人のいない独身者のネット系婚活サービスの利用者は年々増加しています。これに伴い、トラブルに巻き込まれ苦悩する消費者も急増しているので十分注意が必要です。

【マッチングアプリ入会前の注意点】
  1. マッチングアプリ運営事業者の会社概要、業界団体加入の状況等を確認、また口コミ等を参考にするなど運営事業者の信頼性について確認しよう。
  2. 料金体系等をよく確認しよう。無料で利用できる機能、有料でなければ利用できない機能を確認。自動更新契約の場合、退会方法や途中解約時の返金の有無等について確認。アプリストア運営事業者による決済を利用している場合等には、マッチングアプリでの退会手続だけではなく、アプリストアでの定期購入の支払いを解約する手続が必要になる場合もある。
  3. 個人情報の取扱状況をよく確認しよう。マッチングアプリには自身のプロフィールをはじめとする個人情報を登録することとなる。プライバシーポリシーを確認したり、個人情報やプライバシーに関する第三者認証等を受けているか等を確認すること。
【マッチング相手に対する注意点】
  • 個人情報等を安易に伝えないこと。マッチングした相手が信頼できるまで、自宅住所や勤務先等の個人情報等を安易に伝えないこと。
  • 外部サービスへの誘導に注意しよう。SNSや別のアプリ等、外部サービスへの誘導に注意する。アプリ内のコミュニケーションについては運営事業者による監視等により悪質な行為等の検知が行われているが、アプリ外のサービスは監視等の対象とならない場合が多い。
  • 投資等、儲け話に注意が必要。マッチングアプリを通じて詐欺的なサイトに誘導されたりする消費者被害が生じている。暗号資産や投資を勧めてくるなどは十分注意しよう。
  • 相手に対して、不安や違和感などを感じたら運営事業者や警察に相談しよう。例えば、①SNS等の外部サービスのIDを教えるよう求められる、②すぐに暗号資産等の投資話を持ちかけられる、③日本語が不自然など。
  • 実際に会う前に多くの質問を行い、相手が信頼できると確信できるかの確認が大切です。
  • 安全な場所で会うようにしよう。誰とどこで会っているか、いつ帰るか等について信頼できる家族や友人に伝えておくこと。日中、公共の場所等、多くの人がいる場所で会うようにし、移動時も公共の交通手段を利用すること。 
    (参照:消費者庁~マッチングアプリ動向整理)
<事例② 結婚相手紹介サービス>

メッセージアプリで“あなたの条件にぴったりな結婚相手を紹介する”という広告を見つけた。理想の人と出会い、結婚できるかも・・と考え、この業者の事務所に出向いた。

係員から30分程度説明を聞き、長期カウンセリングと3名の見合い保証付き結婚相手紹介契約をすることにした。契約書と自身のプロフィール等を提出し、入会登録料20万円と初月会費1万5000円を現金で支払った。

翌日、お見合い候補の女性の紹介を受け、3人の候補者にお見合いの申し込みをした。数日後、そのうちの1人とお見合いをしたが、相手の女性は食事が終わるとすぐに帰ってしまいお付き合いには至らなかった。

その後も何度か事務所に出向きお見合いの申し込みをした。業者係員が年齢や居住地の条件が合わない女性を紹介してきたので業者にその意図を確認したが、納得のゆく説明をしてもらえなかった。

1か月後、実施するはずだったお見合いが延期になったばかりでなく、その後半年以上業者から連絡がなかった。不満に思い支払った会費を返金してほしいと業者に伝えた。

業者の回答は、①カウンセリングは適切に行っており、問い合わせにはその都度説明をしている。②希望する女性については、一度だけ希望しない年齢の女性を紹介したことがあるが、それ以外は問題ないと考えている。 ③お見合いが延期になっている理由は再三説明をしているとのこと。納得できないので、活動できなかった間の月会費及び受けていないコンサルティング費用を返金してもらいたいが、無理なのか。  (40代 男性)

【注 意 点】
  1. 契約サイン前にいったん持ち帰り、書面の内容が法定記載事項(特商法施行規則)を網羅しているかどうかを精査しましょう。不備書面なら契約を断るという選択肢もあります。
  2. 契約書に記載された約束事項が現実に実施されたかどうか。特にカウンセリングや見合いが実施されなかった理由によっては、返金額増額の根拠になるので説明を求める必要があります。
  3. 監督官庁の要請で結婚相手紹介サービス業界団体の自主規制基準が公表されています。業界団体に加盟している業者であれば、自主規制基準を順守しているかどうか精査し、返金要求の根拠するという方法もあります。 
    (参照・一般社団法人日本結婚相手紹介サービス協議会 自主規制基準)
執筆者プロフィール 金崎賢秀(HN)

埼玉県在住。2003年消費生活アドバイザー資格取得。2005年民間保険会社を定年退職し、同年、地元自治体の消費生活センターで消費生活相談員に任用される。以来18年5か月勤務し、2024年3月末に退職する。現在は社会貢献活動として地元の複数の相談業務に参加。
趣味:各地の自然遺産の探訪。読書(推理小説を乱読)。1945年生れ。