第14回「クリーニング事故でトラブルに遭わないために」~消費生活アドバイザーから見た日本社会におけるギャップ~

クリーニング事故でトラブルに遭わないために

事例1 洋服のクリーニング

先週買った海外有名ブランドのワンピースに油染みが付いていた。
最寄りのクリーニング店にワンピースを持ち込み、“デリケート商品用処理によるクリーニング”を依頼した。その際店員から服の状態について指摘はなかった。
1週間後戻ってきたワンピースの一部が変色しており風合いも変わっていた。再度店に出向いて苦情を伝えたところ、店員から製品の品質に問題があったのではないかと言われた。

メーカーの日本支社に問い合わせしたところ、製品の品質や洗濯表示には問題がない旨の試験結果資料を提示してくれたうえ、「自然乾燥が最も適しているが、このクリーニング店は他の方法で乾燥させ、その結果変色した可能性が高い」。などと助言してくれた。メーカーの助言に基づき、クリーニング店に商品代金全額を補償するよう申し入れた。
店舗は「クリーニングは洗濯表示通りに実施しており問題はない。着用方法に問題があったのでは」と答え、補償要求を拒否した。

ワンピースは購入後数時間着用しただけで、激しい動作はしていないので、納得できない。購入額全額を補償してほしいと、再度伝えた。
数日後、店舗責任者から電話があり、「デリケート商品用処理のクリーニングとして、洗う際に品物を個別に袋に入れ、機械を使わずに手作業で仕上げを行った。品質表示に基づいたクリーニング処理、乾燥、仕上げを行っており、クリーニング処理に問題はなかった。当社に過失がないため補償はしない」というばかり。 (60歳代 年金生活者 女性)

注 意 点
  1. クリーニングはそのサービス内容が消費者の目の前で行われないサービスであるため、トラブルが起きても原因の特定が難しく、解決が困難になることがあります。また、クリーニング済みの衣料のポリ包装袋・カバーに使用される酸化防止剤が、大気中のガスと反応して黄変することもあるので、ポリ包装袋・カバーをはずして収納しましょう。衣料品にパーマ液や漂白剤などが付いた場合は、付着したときに気づかなくても、ドライクリーニング後の仕上げの熱処理によって変色が進んでシミとなり、目立つ場合があります。トラブルが発生したときにはすぐ店に連絡しましょう。
  2. 店舗型クリーニングでトラブルを避けるためには、クリーニングに出すとき、受け取るときに、衣類を業者と消費者双方でチェックすることが大切です。出す際、受け取る際には、その点数、種類、シミの有無、衣料品の処理方法など店との間で確認すること。また、時間が経つと原因の特定が難しくなるので早く引き取りに行きましょう。
  3. Sマーク(注1)やLDマーク(注2)を掲示している店では、預かった品物に損傷を与えた場合、クリーニング事故賠償基準(注3)をもとに対処することになっています。この基準は業界の自主基準ですが、SマークとLDマークがない店でもこの基準を目安に問題解決を図るとよいでしょう。

★注1:Sマークは、厚生労働大臣が認可した「標準営業約款」の3つの基準「Standard(標準)」「Safety(安全)」「Sanitation(衛生)」の頭文字をとったもので、47都道府県の(公財)生活衛生営業指導センターに登録し営業している。

★注2:LDマークは、「Laundry(ランドリ ー )」と「 Drycleaning(ドライクリーニング)」の頭文字をとったもので、全国クリーニング生活衛生同業組合連合会の会員である47都道府県クリーニング生活衛生同業組合に加盟しているクリーニング店に表示されるマーク。全国クリーニング生活衛生同業組合連合会のホームページでマークが掲載されている。

事例2 ネットの宅配型クリーニング

スマホでクリーニング通販サイトを見つけた。会員登録をクレジットカード決済で行い、同時にワンピースを宅配便でサイト業者あてに発送した。

翌日、サイト業者より検品内容のメールが来たので見たところ、サイト業者は送付された衣類がパーティードレスであると判断し、ワンピースのクリーニング料金の5倍以上の金額を提示してきた。納得できなかったため、クリーニングをキャンセルする旨のメールを送り、念のため電話でもキャンセルをしたい旨を伝えた。

しかし業者からは「会社側の検品の仕方はホームページに書いてある。キャンセルができないことも記載しており、あなたの申し出は受け付けられない。」との回答が届いた。業者側の一方的な検品により判断され、キャンセルできないのはどうかと思ったが、衣類は業者の手元にあったため、受け入れざるを得ない状況となった。

送った衣類の種類を一方的に判断し、キャンセルを申し出ても応じない。
さらに衣類の返却を求めても一切応じず、 契約内容の解釈に食い違いがあっても勝手にクレジットカード請求をされ引き落としされた。納得できない。
(40歳代 女性 自由業)

注 意 点
  1. ネット宅配型クリーニングは消費者と事業者が直接対面で確認を行わない非対面式の形態であるがゆえに起こるトラブルが目立っています。また宅配業者が介在することによる衣類の紛失、き損のトラブルも寄せられています。ネット宅配型クリーニング事業者がどのようなサービスを提供しているのか、困ったときの連絡先はどこかなどを事前に確認しておくことが大切です。ウェブサイト上で確認するだけでなく、疑問点については事前に事業者に問い合わせること、預けようとする衣類はリストを作る、シミや汚れが気になる場合は写真を撮って事業者に伝えるとともに自分でもその内容を控えておくなど、できるだけ事業者と情報を共有しておきましょう。
  2. ネット宅配型クリーニング事業者を利用する際には契約内容や事業者の連絡先、賠償基準の内容などを十分確認する必要があります。なお、SマークやLDマークのネット通販サイトでは、預かった品物に損傷を与えた場合、クリーニング事故賠償基準(注3)をもとに適正に対処するようになっています。

★注3:クリーニング事故賠償基準=全国クリーニング生活衛生同業組合連合会が定め、同連合会のウェブサイトで確認することができます。改訂版事故賠償基準では、説明責任や相互確認を条文化しています。

執筆者プロフィール 金崎賢秀(HN)

埼玉県在住。2003年消費生活アドバイザー資格取得。2005年民間保険会社を定年退職し、同年、地元自治体の消費生活センターで消費生活相談員に任用される。以来18年5か月勤務し、2024年3月末に退職する。現在は社会貢献活動として地元の複数の相談業務に参加。
趣味:各地の自然遺産の探訪。読書(推理小説を乱読)。1945年生れ。