第九回「生保・医療保険でトラブルに遭わないために」~消費生活アドバイザーから見た日本社会におけるギャップ~

《消費生活アドバイザーによるギャップ解決情報》第九回「生命保険・医療保険」

<事例① 医療特約付き生命保険

職場訪問していた生命保険の勧誘員から、医療特約付き生命保険を勧められた。その後同じ勧誘員から毎日のように繰り返し勧められたが、勤務時間中であったため、照明の暗さと文字の小ささから説明書類が読みにくい状況であった。詳細な契約内容や告知の重要性について理解しないまま、契約書面にサインしてしまった。 1年後、うつ症状のため入院した。退院後、給付金を請求するため書類を作成し勧誘員に手渡した。数週間後、保険会社から契約解除の通知書が自宅に届いた。理由は、過去の病歴にかかる告知義務違反とのことだった。

不満に思い、契約解除の再考を求める書面を保険会社に送付した。1か月後、保険会社から「告知義務違反による契約解除に変更はない」との回答があった。 不満なので勧誘員に苦情を伝えたうえ、再度書面を送付した。保険会社からの再回答には、「請求のあった入院給付金の支払い可否の判断に当たり、医療照会をしたところ、契約前の期間、うつ病にて通院していたことが判明した。これは告知すべき内容であるのにもかかわらず告知書による告知はなかった。重過失があったと判断し契約解除通知をした。 給付金の請求は拒否し、契約後支払った保険料は一切返金しない」とのこと。しかし、数年前から職場に来訪を続けていた保険勧誘員は自分の通院歴を知っているはず。契約解除を取り消して、給付金を支払ってほしい。でなければ支払った保険料を全額返金してほしい。 (男性 50歳 給与生活者)

【注 意 点】

<告知をするときの留意点>

  1. 生命保険会社指定の医師以外(営業職員や保険代理店の担当者、生命保険面接士など)に健康状態、傷病歴などについて口頭で伝えても告知したことにはなりません。
  2. 健康状態、傷病歴、職業などについて事実を告げなかったり、事実と異なる告知をしたなどの告知義務違反があった場合は、契約(特約)が解除されて、保険金や給付金が受け取れなくなることがあります。
  3. 傷病歴等がある場合でも、その内容や申込みをする保険商品によっては、通常どおり契約できる場合があります。「保険料の割増」や「保険金の削減」、「特定部位不担保」などの特別な条件がつく場合もあります。また、健康状態・過去の傷病歴に関する告知が不要な生命保険や、傷病歴等があっても契約しやすい生命保険もあります。
  4. なお、営業職員(勧誘員)などが事実の告知をしないことや、事実でないことを告知するよう勧めた場合などには、保険金や給付金は支払われ、契約も解除されません。
  5. そもそも生命保険は、多数の人々が保険料を出しあって、相互に保障しあう制度です。初めから健康状態の良くない人や危険度の高い職業に従事している人などが無条件に契約しますと、保険料負担の公平性が保たれなくなります。したがって契約にあたって契約者または被保険者は、過去の傷病歴(傷病名・治療期間等)、現在の健康状態、職業などについて、告知書や生命保険会社の指定した医師の質問に、事実をありのまま告げる義務(告知義務)があります
<事例② 医療保険>

SNS広告を見て、月額約5000円の医療保険に加入した。数か月後、銀行口座への入金を失念したため、残高不足により保険契約が失効してしまった。保険会社から保険の復活手続き依頼があったので、直ちに保険の復活手続をした。その後、保険会社から、「健康告知の内容により、復活の手続ができない」との審査結果通知が届いた。納得できないので、何度か保険業者に問い合わせをしたところ、保険の復活手続の際、告知書に記載された既往歴が契約復活の基準に抵触するため、保険の復活はできないと言われた。念のため保険契約書及び約款を読んだが、契約復活の請求を行う際の入院や病歴、 既往歴など告知内容次第で復活が承認されない可能性がある点が書類上、明確に記載されていなかった。保険会社に書面で、復活してもらいたいとの申出書を送付したところ、書面で回答が届いた。内容は、保険契約の復活申請手続がなされた際、告知書に記載のあった傷害事故が、当社が所定する「復活を承認できない基準」に該当したため、となっている。 これらの保険引き受けの基準は非公開情報であり、保険約款や重要事項説明書には記載していないと書いてあった。到納得できない。 (男性 40歳代 給与生活者)

【注 意 点】
  1. 契約(復活)する際には、生命保険会社が申込みを引き受けるかどうか判断できるよう、契約者(または被保険者)は被保険者の現在の健康状態、過去の傷病歴、職業などの事実をありのまま告知する義務(告知義務)があります。
  2. その結果、健康などに問題があった場合、生命保険会社ではその申込みを引き受けないこともあります。ただし、その症状が治療を受けるほどでもない人や、病気が完治して一定の年数を経過した人などは無条件で契約できる場合があります。また、割増保険料や保険金の削減(※)など、特別条件を付けることにより契約できる場合があります。
  3. さらに、医療関係の特約を主契約に付加するケースでは、「特定部位不担保」という条件付きで契約できる場合もあります。これは、例えば3年前に胃かいようで入院したが、現在は完治しているという人に対して、特約は付けられるが、「胃」の病気で入院した場合は、入院給付金や手術給付金を契約時から一定期間内は支払わないというように、身体の一部分(部位)を特約の対象から外す(不担保にする)方法です

(参照:公益財団法人 生命保険文化センターHP)

執筆者プロフィール 金崎賢秀(HN)

埼玉県在住。2003年消費生活アドバイザー資格取得。2005年民間保険会社を定年退職し、同年、地元自治体の消費生活センターで消費生活相談員に任用される。以来18年5か月勤務し、2024年3月末に退職する。現在は社会貢献活動として地元の複数の相談業務に参加。
趣味:各地の自然遺産の探訪。読書(推理小説を乱読)。1945年生れ。