第一回「SNSのダークパターン」~消費生活アドバイザーから見た日本社会におけるギャップ

SNSでトラブルに遭わないために

スマートフォンの普及により、年齢・性別を問わずSNS(social networking service)を利用するようになり、インターネットを介して、 個人と個人、個人と組織、組織と組織の間で社会的なコミュニケーションが可能になっています。

他のメディアとは異なり、利用者の誰もが情報の発信者になれるSNS は便利なコミュニケーションツールですが、いわゆるダークパターン(ユーザーをだましたり、勘違いさせるようなデザインに対して名づけられた名称)として悪用されるケースもあります。

今回は、SNS をきっかけとした消費者トラブルにあわないための注意点についてまとめます。

事例①:美容品の定期購入

先日、自宅に宅配便が届いた。受け取って開封したところ、1か月以上前に画像専用SNSで知り、注文した無料試供品と同じ美容品だった。送金票が同封され、定期購入2か月分11,900円を送金するようにと書かれていた。また、今後2か月ごとに2か月分発送しその都度11,900円を請求するとも書いてある。家族全員に聞いたが、注文したことはないという。販売業者のカスタマーセンターに電話し定期購入した覚えはないと告げたが、契約規約により解約はできないとのこと。請求を無視していたところ、昨日、知らない弁護士事務所から債権回収の封書が届き困惑している。返品したうえ請求を取り消させたい。また自分以外にも多数の被害者がいると思うので、誤解を生みやすいweb広告及び申込画面を分かりやい表示に修正させたい。

事例②:ダイエットサプリメント

SNSのバナー広告でダイエットサプリメントがキャンペーン中は格安で配布と表示されていた。送料のみ負担とあったので購入サイトに移動し申込み、クレジットカード番号を入力した。試供品が届いた数週間後に、宅配便で同じサプリメントが届いた。販売業者の購入履歴を調べ、定期購入契約の1回目配送であると分かった。定期購入契約をした覚えがないが、取り消し方法がわからないまま2週間が経過した。クレジット会社に電話し、クレジット請求を止めるよう求めたところ、国際決済業者から請求が上がっているので、販売業者から取り消しがなければ請求せざるを得ないと言われた。販売業者にメールで、解約申し出した。しかし業者の回答は、通常商品の定期コースの契約であり、商品発送後1週間以内に解約を申し出れば送料のみの負担だが、申し出なければ定期購入になり、すでに解約申し出期間は過ぎているとのこと。解約申し出方法がわからなかったと告げたが、契約規約に書いてあるというばかり。支払いたくない。

注意点

  • SNSのバナー広告は、消費者の購買傾向や嗜好に合わせてそれぞれ表示されるターゲティング性の強い広告といえます。消費者のネット利用情報(どのようなサイトを見ているか、どのような商品を購入するかなどの行動履歴)を収集して個々の消費者の興味や嗜好に合わせて行われる広告です。
    不特定多数に広く宣伝するという従来の広告の概念では捉えられない広告活動であり、広告相手を限定しているという点では勧誘行為ともいえます。あわてず、十分注意して対処しましょう。
  • SNS広告或いは、申込内容を確定するとのボタン上に、申込内容が表示されていても、そこに記載された金額が初回のみの金額で、2回目以降の金額や支払時期は表示されていないため、単品購入と判断して契約してしまう恐れがあります。契約規約を確認するなど、余裕をもって対処しましょう。
  • 定期購入であること、定期購入の回数や購入総額、解約条件等が見やすい場所にわかりやすい表現で表示されていれば誤認することはないでしょう。
    しかし、これらの表示が、画面下部に、他の表示と比較して著しく小さな文字で記載され、しかもその表示を確認するためには多数回スクロールする必要があるうえ、スクロールバー自体の表示がなく、注文者が申込内容を容易に確認・訂正できるように表示されていない等のダークパターンが存在するので注意しましょう。
  • 申込最終確認画面に、「一度試して自分に合わなかったら返金する」或いは、「発送後〇日までに申し出れば解約は可能」と表示されていても、解約申し出ボタンが存在しない、或いは業者の解約申し出電話が何度試しても繋がらず解約できないまま期日が過ぎてしまうといった、ダークパターンが存在するので注意しましょう。
  • 悪意を持った詐欺のようなものは別として、ダークパターンの多くは明確に違法とはいい切れず、法律での取り締まりには限界があるといわれています。
    ダークパターンは人間の「つい、うっかりやってしまう」という感情を利用しているので、この感情に左右されず、落ち着いて考え判断することが必要ではないでしょうか。

最後に

SNS関連のトラブル相談には、上記の事例以外にも、注文した商品が届かない、偽物が届いたなど、詐欺・ 模倣品サイトのトラブルもみられます。大幅な値引きや低価格、商品の効果を過剰にうたう SNS上の広告や、簡単にもうかる、会いたいなどの投稿やメッセージは鵜呑みにしないようにしましょう。

また、オンラインサロンでは、事前に内容を確かめることができないまま契約し、入会後に広告や説明と違うといったトラブルも発生しています。 契約前に内容を十分確認しましょう。

【参 考】電子契約における法規制について

(顧客の意に反して契約の申込をさせようとする行為の禁止)

販売事業者又は役務提供事業者が、電子契約の申込を受ける場合において、申込の内容を、顧客が電子契約に係る電子計算機の操作を行う際に容易に認識し及び訂正できるようにしていないこと(特商法施行規則第16条第1項第2号)

通信販売の申込み段階における表示についてのガイドライン(消費者庁)

👉通信販売の申込段階における表示

  1. 契約期間(商品の引き渡しの回数、購入者から解約通知がない限り契約が継続する無期限又は自動更新のある契約である場合はその旨)
  2. 消費者が支払うこととなる金額(各回ごとの商品の代金及び送料並びに支払総額等)
  3. 各回ごとの商品の代金の支払時期及びその他の特別の販売条件(購入者が商品を購入しなければならない回数が定められている場合にはその旨、及びその回数並びに解約条件等)。尚、解約条件等の定期購入契約の主な内容に商品の引渡時期が密接に関連する場合は、各回ごとの商品の引渡時期も含まれる)

👉禁止行為に該当する恐れがある

  1. 申し込みの最終段階の画面上において、定期購入契約の主な内容の全てが表示されていない
  2. 申し込みの最終段階の画面上において、定期購入契約の主な内容の全てが容易に認識できないほど、その一部が離れた場所に表示されている
執筆者プロフィール
金崎賢秀(HN)

埼玉県在住。2003年消費生活アドバイザー資格取得。2005年民間保険会社を定年退職し、同年、地元自治体の消費生活センターで消費生活相談員に任用される。以来18年5か月勤務し、2024年3月末に退職する。現在は社会貢献活動として地元の複数の相談業務に参加。
趣味:各地の自然遺産の探訪。読書(推理小説を乱読)。1945年生れ。

消費生活アドバイザーとは
内閣総理大臣及び経済産業大臣の認定資格であり、消費者と企業や行政の架け橋として、消費者からの提案や意見を企業経営ならびに行政等への提言に効果的に反映させるとともに、消費者の苦情相談等に対して迅速かつ適切なアドバイスが実施できるなど、幅広い分野で社会貢献を果たす人材を養成することを目的としています。

消費生活センターとは
地方公共団体が設置する行政機関で、商品やサービスなど消費生活全般に関する苦情や問合せなど、消費者からの相談を専門の相談員が受け付け、公正な立場で処理にあたっています。事業者に対する消費者の苦情や相談のほかに、消費者啓発活動や生活に関する情報提供なども行っています。消費生活センター設置は、消費者と事業者との間の情報の質および量ならびに交渉力等の格差にかんがみ、消費者の利益の擁護および増進に関し、消費者の権利の尊重およびその自立の支援をすることと定められています(消費者基本法及び消費者安全法)